七味をかける

日がなごろごろ

パンタ・レイ


友人から、ライブのチケットが届いた。

 
アイドルにハマったのは社会人になってからだった。
新卒で入った会社は、いわゆる男社会で、飲み会も盛んだった。毎日、喫煙所で分からない会話にとにかく頷いて愛想を振りまいていた。それしか出来ることは無かったから。

そんなわけで家に帰るともう何にもやる気がしなくて、服も着替えず床に寝そべって、動画サイトを永遠に彷徨っていた。
何かを探していたわけでは無くて、偶然にその動画は目に入った。キラキラした女の子たちが、一生懸命に歌って、踊っている。そこからはもう、トントン拍子に、アイドルオタクの出来上がりだ。

 

私が好きになったのは「ハロー!プロジェクト」、通称「ハロプロ」という、女性アイドルグループが所属する団体だ。ある程度の年代であれば、「モーニング娘。」は聞いたことがあると思う(私は「アンジュルム」っていうグループが一番好きだ)。
正直に言えば少しださくて、でも前向きな歌詞(すぐに愛を歌う)。それから、バキバキのダンスに本当に生で歌っているの?ってくらい上手い歌。それぞれが自分のかわいいやかっこいいをやっている姿。そんなところが大好きになった。


すっかりハロプロの沼にズブズブと沈んでいった頃、とある高校時代の友人もハマっているということを知った。多分二年間くらいまともに連絡も取っていなかった。

メッセージを送りあって盛り上がって、そのまま一緒にライブに行くことになった。大盛り上がりした帰りには飲み屋さんでどの子が推しだ、どの曲が好きだなどと話して、久しぶりでもこんなに話せるんだなと少し関係ないことを考えたりした。

恥ずかしながらそこで絵のアカウントを教えて「〇〇の字だって思った」と言われて、絵の感想じゃないじゃん、と気恥ずかしさから突っ込んだ。そうか字を見る機会も無くなったのか、と月日が経ったことを感じながら。



春にひなフェスというハロプロ全体で行うコンサートがある。どうやら彼女はいけなくなってしまったらしくて、私が代わりに行くことになった。

封筒でチケットは届いた。
彼女の字を見るのは久しぶりだった。 そこには彼女特有の、丸っこく、しかしながら読みやすくどこかのびのびとした字が並んでいる。

「また一緒にライブ行こうね」と添えられた手紙には書かれており、大人になるのは悪くないことかもしれないって思った。



おまけ

『大器晩成』という曲がある。2014年までスマイレージ、という名前からアンジュルムに変わった際にリリースされた曲だ。サビの歌詞は当時のリーダーである和田彩花から、2014年の新メンバーであった室田瑞希が連続で歌うパートになっている。
アンジュルムはパフォーマンスの要になっていた子が次々と抜けていっている状態だった。室田瑞希もその一人で、はたしてそのパートは誰が歌うんだろうとファンは予想しあっていた。

現在のリーダーである竹内朱莉が歌う。
「何にも惑わされずに」
フォーメーションも激しく変わる歌だ、遠目からは誰が次を歌うのかは分からない。
「どんな時代にも流されずに」
松本わかな、14歳。新メンバーの中でも最年少。高らかに歌い上げる姿に、間違いなくこれは世代交代なのだと感じて、コロナ禍、声を出せないライブ会場にもどよめきが走った。
今日もアンジュルムは最高最強です。